オリジナル短編小説を書いてみた 恭一と加代①

なにかの気配を感じて、はっと振り返った。
三好恭一は、所沢に戻ってきたところだった。新宿のカメラ屋で買い物を済まし、その品々が詰まった紙袋が、右腕に軽い痛みを連続的に与え続けている。
また、視線を感じて、振り返る。
しかし無表情の乗降客がごった返すだけで、恭一は追い立てられるように、改札を飛び出した。
時計を見ると、約束の時間まであと十分もない。
住まいであるマンションはすぐそこだが、部屋に戻っている時間はない。
恭一は観念したかのように、紙袋を持ち直した。
所沢駅西口のロータリーを抜けて、小金井街道に出、そのまま北側に進路をとると、やがてダイエーが見えてくる。
ダイエーを過ぎてしばらく歩くと、ファルマン通り交差点と呼ばれるスクランブル交差点に出る。
北側に延びる通りが飛行機新道、航空記念公園に続く道だ。
そして、西側に続く通りが銀座通り商店街と呼ばれる区域で、かつては豪奢な蔵を構えた商店や、市役所、警察署など主要な公的機関も鎮座していた所沢の中心地であった。
無論、今も所沢の中心ではあるのだが、市役所も警察署もとうの昔にここにはなく、今はその人通りはお世辞にも多いとはいえない。