オリジナル短編小説を書いてみた 恭一と加代④

小さな古本屋だが、扱っている本はバラエティに富み、しかもどれもベストセラーからは程遠い類の本で、恭一の好奇心を揺さぶるにはもってこいのラインナップだ。
もうすべてチェックしたと思っても、次に行くと、必ず新しいものが入っている。
その目新しさといったら、新刊を並べた書店をも凌駕する。
先週は、それこそ好奇心がぶんぶんと揺さぶられるものが入荷していた。
アルバムだ。写真を貼る、あのアルバムだ。
どこをどう見ても、個人の、しかも有名でもなんでもない一般人の写真が貼り付けてある、アルバムだ。
「こんなものまで、扱っているんですか?」恭一は、そのときはじめてこの老女と会話を交わした。

老女は人見知りの性格なのか、それともそのマスクが邪魔をしているのか、それまでは本を買っても言葉を交わすことなく、会計するだけだった。
しかし、その日は、話が弾んだ。
「時々、古い写真を売りたいって人がいるんですよ。古い写真だと、コレクターとかがかってくれるんです。あと、役所の人とか出版社の人とかも、買いに来るんです」