オリジナル短編小説を書いてみた 恭一と加代 ⑤

「なるほど。所沢は航空発祥の地ですものね。古い写真は、歴史的価値があるんでしょうね」
「そう。写真によっては結構いい値がつくんです。だから、わたしも、写真を持ち込んでみようかなって。ここの店主が、売れたら七割をくれるっていうもんですから。」
「大切な思い出を売るんですか?」「思い出?」老女の目が、笑った気がした。
「わたしくらいの歳になると、思い出なんて、そう重要なものでもないんですよ。それに、私はこの先長くないですからね、写真なんか持っていても邪魔なだけなんです。昔を懐かしむような時期はとっくに過ぎてしまいました」
「そういうものですか」「わたしも今日、写真を何枚か持ってきたんですよ。でも、ばら売りよりも年代ごとに分類してアルバムに貼り付けたほうがらいい値がつくっていうものですから、今、仕分けをしていたんです」老女は、番台に、数枚の写真を広げた。
それらはすべて白黒で、風景や人物の服装からいって、終戦直後のものらしかった。